1度死んで生まれ変わった話。

人は死んでも生まれ変われる。

宗教やその類の話ではない。

正しく言い換えると、「今まで生きてきた自分を全否定し殺す」のだ。

私は世界の塵だった。

焼失は免れたが、この世の人間が人間として存在する中で、私は塵として静かに息をしていた。

 

少し賢い中学校に入学した。

小学生だった私は打ちのめされた。

勉強が出来なくなった。

運動がもっと出来なくなった。

全ての授業において成績最下位だった。

親から期待されていたし、自分自身にも期待をしていた。

若すぎる私は混乱した。

そして天才的な自己保身法を編み出した。

「全ての努力を辞めればいい」

私は努力することを辞めた。

逃げて逃げて逃げ続けた

鬼が来て津波が来て地震が起こっても逃げ続けた

逃げた先は崖だったのでそのまま飛び降りて死んだ

 

死んだ私は、みんなが人間として日々をまともに生きている横で、ベッドの上で静かに塵として存在していた。

そしてゆっくりと少しずつ再生した。

記憶を溶かすことに成功したのだ。

それでもまだ覚えているものがあるが文字にするのも億劫なので、墓場まで持っていくことにする。

 

再生した私は活発だった。

所謂「躁鬱」だった。

躁の部分が上手く作用して、私はストリップの照明師になった。

 

私は照明のセンスが抜群にあった。

初めて人に認められた、褒められた、必要とされた、自分が誇らしくなった

私は世界に存在していた

塵は人間になれた

 

ストリップが存在価値だった私はストリップを辞めた。

当時付き合っていた彼氏がいたので存在価値をその人に移せたのだ。

 

猫を飼った。

彼氏とは別れたが、猫が存在価値となったので塵にはならなかった。

そしてなんやかんや現在もまともな顔して生活を送ることに成功している。

しかしそんな強行策で本当に塵が人間になれると思うだろうか。

 

残念ながら「人間もどき」です。

 

でも私はその「人間もどき」のまま生き抜き続けたら本当の人間になれると信じている。

いつか記憶が塗り替えられて今の「人間もどき」の私が本当の自分として、人間として、存在できると信じている。

 

私の周りは人間しかいないからどうせ人間になれるだろ。